1. 事業内容

Heartseed株式会社は、iPS細胞由来の心筋細胞を用いた心筋再生医療の開発を行うバイオベンチャーです。主に重症心不全患者を対象に、心筋球と呼ばれる微小組織を心臓に移植する治療法を確立しています。この治療法は、心筋細胞が患者の心筋に生着し、心機能を改善することを目的としています。現在、開胸手術による治療プログラム（HS-001）を中心に、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を進めており、国立研究開発法人日本医療研究開発機構（AMED）からの支援も受けています。

2. 事業の特徴

1. 再生医療の先駆的アプローチ

Heartseedの心筋再生医療は、iPS細胞から作製した心筋細胞を直接心臓に移植する「Remuscularization（心筋補填療法）」を採用しています。このアプローチにより、心筋細胞が患者の心筋に生着し、長期的な機能改善が期待されます。従来の治療法に比べて根本的な治療が可能となり、重症心不全患者に新たな希望を提供します。

2. 高い安全性と有効性

Heartseedは、心筋細胞の純化精製技術を用いて、未分化iPS細胞や非心筋細胞を除去し、高純度の心筋細胞を製造しています。この技術により、腫瘍形成や免疫拒絶のリスクを低減し、安全性を確保しています。非臨床試験でも心筋球の生着率や心機能改善が確認されており、臨床試験においても良好な結果が期待されています。

3. グローバルな展開戦略

Heartseedは、ノボノルディスク エー・エスとの提携により、他家iPS細胞由来心筋球の海外展開を視野に入れています。この提携により、国際的な市場へのアクセスが可能となり、治療法の普及を加速させることが期待されています。また、国内では条件及び期限付き承認を目指しており、早期の実用化を図っています。

3. 経営成績の推移とその要因の分析

Heartseed株式会社の第8期事業年度（2022年11月1日～2023年10月31日）の売上高は344,725千円で、前年度比30.9％減少しました。この減少は、ノボノルディスク エー・エスとの独占的技術提携における開発マイルストンの達成によるもので、収益計上が減少したことが主な要因です。営業損失は1,459,614千円と、前年度の1,458,590千円とほぼ横ばいでした。営業外収益は194,628千円に増加し、東京都からの補助金が寄与しましたが、営業外費用が増加したため経常損失は1,456,584千円となりました。これらの要因から、当期純損失は1,473,500千円と、前年の1,412,728千円から増加しました。全体として、臨床開発の進捗に伴う費用が影響し、収益性の改善が課題となっています。